銀イオン研究室



[研究室長] 滝沢文男 喜務良工業葛Z術顧問
[資料提供] 
ティーケープラン


すばらしい銀の魅力

古来より銀は、貴金属として人類に愛され、指輪、ネックレスなど幅広い分野で日常生活に使用されてきました。また、銀の隠れた能力についても旧聖書の時代から人類は注目しておりました。それは、銀の殺菌性、消臭性、触媒性についての能力でした。


銀による殺菌は1300年もの昔から利用されていました
銀の硬貨を井戸に入れておくと、その井戸からは伝染病の発生はないと、1300年前の人類は知っておりました。これを実用化したのが「銀の壺」でした。遠洋航海に出る船の飲料水をこの中に保管する事で、1年以上新鮮なままで水質を維持する事を可能にしました。また、第二次世界大戦の時、ドイツとロシアの軍隊が戦ったが、赤痢が発生し双方とも病気治療のため停戦となり、この治療に使われたのが、「銀の水」でした。この水を飲む事によって赤痢の治療が可能になったのです。銀イオン水を使った、コレラの治療法の発見者は、ドイツのGクラウスで、1929年に成果を発表しました。金属の銀が水に接する時に自然溶出する銀イオンが、微生物に殺菌している事を発見したからです。大量の上水道に銀イオン殺菌する方法は、ソ連で銀イオン電解法が開発された、1930年以降であります。
上水道の殺菌に使用した国は、フランス、ドイツ、アメリカ、チェコスロバキアなど多数ありましたが、上水道の殺菌は、第二次世界大戦後は、処理コストの関係で、全て塩素殺菌に変っております。

銀イオン水は大腸菌、ブドウ球状菌、レジオネラ菌など、ほぼ全ての細菌に殺菌効果を示します。また、銀は現在、生活一般、医療、工業、農業など多くの分野で使用されています。


消臭性にも優れています
銀は金属の中でも、最も酸化力が強く、あらゆるものを酸化します。物質の2重結合に作用して、臭いを別の物質に変えます。トイレの臭いなどの悪臭に、銀の水を掛けると、あっという間に臭いは消えます。また、台所の排水口に、銀製品を使用していると排水の悪臭も無くなります。


銀の特異性

触媒機能として、銀が使用されたのは、エチレンを部分酸化して、エチレンオキサイドを作製する反応に銀が使われ特異性を発揮しました。


このように、「銀イオン」は非常に魅力的なものですが、簡単に銀イオンを作る方法が有りませんでした。当社では、「ゼオライト銀」や「メタル銀」の微粉体を樹脂の表面にコーティングする技術を開発し、銀イオン水を手軽に作る方法を開発しました。社内では、この商品を「ドラゴン」と命名しております。食品添加物用のドラゴン、他用途のドラゴンがあり、あらゆる用途に適応致しております。





銀イオン成型体を用いた細菌の浄水技術
ここでは、ゼオライト抗菌剤成型体の水の中における細菌の浄化技術、イオンによる活性酸素の発生について、をご紹介致します。


1.抗菌剤について
今回使用した抗菌剤は、銀イオンにゼオライトを担持したものである。銀イオンゼオライトはイオン交換率4.5%のものを使用した。樹脂にはポリエチレンを使用し、表面に重量比3%の銀ゼオライトをコーティングした。以下「ドラゴン」と呼ぶ。


2.ゼオライト成型体の細菌浄化能力
AZ2.4g(ゼオライト7.2mg)をイオン交換水200mlに入れ25℃で攪拌したとき、溶出してくる銀イオン濃度と生存大腸菌数の時間変化を測定しました。(左表−1)5分で1.6ppb、10分で2.4ppb、20分で4.6ppbと、水中の溶出銀イオン濃度は、ほぼ対数曲線的に増加した(図中△)。溶出時間20分の時、あらかじめ25℃のポリペプトン液体培地で12時間培養した後、大腸菌懸濁液を6.2×105cells/mlなるように添加した(図中□)。溶出時間30分の時、生存大腸菌数は10分で6.2×105cells/mlから5.3×104cells/mlへと90%以上減少した。一方、大腸菌を含んだ水の全溶出銀イオン濃度(図中○)は、30分では6.1ppbと推定され大腸菌の増加に係りなく対数曲線的に増加し銀イオンの溶出は継続していることがわかった。しかし、0.47μmメンブランフィルターで大腸菌と溶液とを分離すると、水中に残った溶出銀イオン濃度は、4.6ppbから2.8ppbへ減少し、大腸菌に取り込まれたことを示唆している。したがって大腸菌に取り込まれた銀イオン量は、図中○印の曲線と△印の曲線との差として示される生存大腸菌数は溶出時間140分でゼロとなるが、それ以後も大腸菌に取り込まれる銀イオン量は増加することが図から読み取れます。なお、銀イオンを含まないゼオライトを用いた同様実験測定値では、生存大腸菌への影響はないとみなせ(図中■)ゼオライトとその物の大腸菌への影響は無視出きる事が分かりました。このように銀イオンの抗菌性は、全溶出銀イオン濃度がppb一桁オーダーでも十分に発揮され、20分間に大腸菌濃度が6.2×105cells/mlから7.0×102cells/mlへ、0.1%に減少した。また、水中に残っている溶出銀イオン濃度(図中△印)は、溶出時間とともに比較的早く平均値に近づく傾向があり、それに引き換え、水中に溶出した銀イオンは、ほとんど大腸菌に捕獲されている事が分かった。ちなみに、溶出銀イオン濃度1ppbは9.2nMに相当し、これから20分間に死亡大腸菌一個当たりに取り込まれた銀イオンは、4.1×107個と計算される。

3.なぜ殺菌できるのか
銀イオンによる殺菌は、金属イオンによる活性酸素の生成による、微生物の酵素の破壊作用説、金属イオン拡散による、微生物の細胞膜の破壊を引き起こす作用があげられている。本文においては、銀イオンによる活性酸素の発生についての実験結果をとりあげてみたい。



4.銀イオン溶出液における、ヒドロキシルラジカル(・OH)の連続発生

試料は「ドラゴン」を長期にイオン交換水に添加し、時々攪拌しながら37℃で約一ヶ月放置した。これをベースにし、3.08ppmの溶液を作り、これを基準とした。測定器には、日本電子(株)のLC21を使用した。フリーラジカルの検出は電子スピン共鳴法によって行った。まず、ヒドロキシルラジカル(・OH)について検討した。3.08ppmの銀イオン溶出液の基液に、さらに測定時にイオン交換水を加え、濃度を変化させた、測定試料を作成した。それぞれの試料の180μlに9.2MのDMPO20μlを添加攪拌しながら反応させ、したがって3.08ppm(28.5μM)は、測定時には25.7μMになるが、反応時間40秒、3分、5分30秒と継続してESR装置によって、ラジカルを測定した。基液の2倍希釈(12.8μM)におけるスピンアダクトDMPO−OHが反応時間40秒から測定できた。そして、3分、5分30秒と反応時間とともにESRスペクトルが大きくなっている。この時点のDMPOの濃度は、0.92Mで、試料の溶出銀イオン濃度12.8μMの7.2×104倍も、DMPOが大過剰に存在していた。したがって、ヒドロキシルラジカルが発現したとき、ただちに、スピンアダクトDMPM−OHが生成される状態にある。この事とスピンアダクトDMPO−OHのスペクトルが反応時間とともに大きくなっている事を考察すると、銀イオン溶出水溶液から、ヒドロキシルラジカルが、継続して発生している事が分かった。




次に、反応時間5時間30分において、溶出銀イオン濃度変化に伴うESRスペクトルを第3図に示す。図ではスピンアダクトDMPO−OHが溶出銀イオン濃度1.6〜25.7μM、すなわち基液が16倍希釈濃度でも、常に観測できた。ヒドロキシルラジカルは、ESRスペクトルから、ほぼ銀イオン濃度に依存して発生する事が認められた。そこで、Tempolを用いてヒドロキシルラジカルを検討した。ヒドロキシルラジカル量の銀イオン濃度による依存性を第4図(図中○印)に示す。ヒドロキシルラジカル量は、およそ、銀イオン濃度2μMでは、急激に増加し、その後、穏やかに平均値に近づく対数曲線的な増加を示した。このことから、16倍希釈(193ppb)の溶出銀イオン濃度1.6μMでも、すでに、0.2μM以上のヒドロキシルラジカルを発生したので、実験した基液の濃度は、十分高いと思われた。また、ヒドロキシルラジカルは、反応時間とともに、確実に増加した。したがって、銀イオン溶出液からヒドロキシルラジカルが継続して発生している事が、ここでも証明できた。さらに、第4図の原点近傍の直線部分の勾配から、溶出銀イオン濃度が非常に低い場合、銀イオン濃度0.1μMによる、ヒドロキシルラジカル発生量が、ほぼ、0.2μMと近似できた。すなわち、この付近では、銀イオン一個当たり、ヒドロキシルラジカルが二個以上生成する事が分かった。




この事を、第1図に適用すると、溶出時間40分時の溶出銀イオン濃度は、73.2nM(=7.9ppb×9.27nM/ppb)であるから、ヒドロキシルラジカル発生量は約0.15μMと推定される。このラジカル量で生存大腸菌は6.2×105cells/mlから7.0×103cells/mlへ、20分で減少した事と関連づけられる。次に、7.06ppmと3.08ppmのいずれかを基液とする資料でも、横軸の溶出銀イオン濃度が同じμMであるなら、測定時に発現するヒドロキシルラジカルは、同じ量になると予測された。そこで、7.06ppmを基液とする試料についても、同様に、イオン交換蒸留水で希釈し、濃度を変えて測定した。Tempolによる定量結果を第4図(図中□印)に示す。図からあきらかなように、両測定結果は、誤差範囲内におさまるものではなく、明らかに異なる。この原因については、明らかではない。しかし、水溶液から、「ドラゴン」を分離すると、分離後の時間が同じであっても、溶液に溶出した銀イオンが、あるいは、ヒドロキシルラジカル発現能力が、時間とともに、濃度とともに変化する事を示唆している。今後、検討したい。しかしながら、高濃度である、7.06ppmにおけるESRのスペクトル結果を、反応時間5分30秒の場合について、第5図に示す。第3図と同様に溶出汽船イオン濃度3.7〜58.9μMで、スピンアダクトDMPO−OHを常に観測でき、スペクトルの大きさは、第3図のおおよそ2倍に匹敵し、基液の濃度比2.3倍に幾分対応しているように思えた。














この論文は、エネルギー・化学・プラントの総合誌『ジェティ』2004年6月号にも掲載されております。


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